布施とは
「布施」というと、”お寺さま”へのプレゼントぐらいにしか考えられていないようですが、そうではありません。 布施は仏道修行者が、初めから終わりまで実践しなけれはならない大切な徳目です。六波羅蜜(はらみつ)の第一に「布施」がおかれるゆえんです。
布施を、一言でいえば「相互扶助」であり「与えあい」です。 布施行を積んでゆくと、この世に存在するものすべて − 人間に限らず、動植物から大自然に至るまで、何らかの形で互いに恵みを受けつつ、また与えつつ生かされ生きている真理が実感されます。 そしてこの真理なくしては、何ものも存在できない事実が体験できます。
つまり「一即一切・一切即一」という華厳経に説く毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)の世界観です。 いいかえるなら、私たちは他から受ける恩恵に感謝するとともに、他に恩を返すことに意義とよろこぴを覚えるのが「布施の真髄」です。
布とは<あまねく・広く>の意味です。 施は、施し・与えるよりも、むしろ<お返しする>ニュアンスを待つ言葉です。 布施の原語は、梵語のダーナで、音写して「檀那(だんな)」と書きます。 檀那は本来「施しをする人」のことで、檀那寺・檀家という存在が生まれます。
布施は財力や学力がなくても、柔かい心、優しい心さえあればりっばにできるから、「無財の七施」といいます。 無財とは、「財源や財物が無くても」というだけではありません。 「金銭では算定できない尊い価値」で、この意味で「無価」といいます。 絶対の価値ということです。
*無財の七施とは以下のとおりです。
捨身施 |
動作で人によくしてあげる。 |
心慮施 |
他者の悲・喜を自分のこころとする。 |
和顔施(わげん) |
やさしい顔、ほほえみで接する。 |
慈眼施(じげん) |
いつくしみの眼でみつめる。 |
愛語施 |
あたたかい呼びかけ。 |
房舎施 |
住む場・心にゆとりを与える。 |
床座施 |
座席をゆずる・ゆずりあい。 |
私たちは、自分の力で生きるのではなく、生かされて生きるのです。 このことへの謝念の実現が「布施」なのです。
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