法衣、袈裟の意味
比丘・比丘尼といった出家者は、この世のすべての欲望を捨て去ったものであるから、着るものも、三衣・五衣といった、きめられた数のものしか持つことが許されませんでした。
しかもその材料は、俗人が不必要になって捨てた布切れ、たとえは、墓場に捨てられていたもの<死人を包んだもの>、ねずみにかじられたもの、といった、廃物利用とでもいうべきものであったので、糞掃衣(ふんぞうえ)とも呼ばれていました。 こういった布切れを集めてきて、それらを洗ってから適当な大きさにつぎ足し、壊色(えじき)と呼はれる、原色を避けた色に染められました。 この壊色という言葉の原梵語がカサーヤで、これを漢字に音字したものが袈裟であるから、袈裟とは法衣の色を指したわけです。 その材料と色とから、人に盗まれることも、又、別なことに用いることもできなくしたわけです。
後になると、仏教内部で分裂が起こったので、部派によって製法や色が違ってきたために、現在の南方仏教では、似たような色ではあるが、国によって少しずつ色や形が違っています。
北方系仏教においては、気候の関係から、という理由もあって、三衣のほかにいろいろな法衣が用いられるようになり、特に日本においては、僧侶の着物が神聖視され、儀式用に作られることが多くなったために、華美になり、宗派によって形式が極めて複雑になりました。 但し、五条衣とか七条衣、更には九条衣といったものは、元来それだけの数の布切れを縫い合わせたものであるから、三衣を形式化したものといえます。
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