僧侶について

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僧侶の守っている規則
僧侶の守っている規則

 仏教徒として守るべき規則に「戒律」があるが、これは厳密には戒と律からなり、戒とは自分が自発的に定めるいましめで、律とは外側から自分の言動を規制するものです。

 わが国に伝わる大乗仏教では、こうした形式的な戒律を守るよりも、信仰があれば戒律は自然に守られてゆくという立場から、法律上の罪を犯さないかぎり教団や寺院から追放されるような罰則はなく、僧侶や一般仏教徒の自主性を尊重しています。 僧侶の飲酒や肉食妻帯などの習慣はわが国独得で、他の仏教国には見られません。

 しかしながら、わが国には今日、宗派によって定められた規則以外に僧侶として守るべき外罰的な規則がないにしても、自主的に守るべきいましめがあります。 それはすなわち、僧侶の日課として昔から「一掃除、二勤行(ごんぎょう)、三学問」がなすべき仕事であるといわれています。 この順序はちょうどドイツの観念論者ヘーゲルの説く「知・情・意」と逆で、僧侶には一にも二にも自利利他の実践行が重視され、まず第一に身辺の整理・整頓や清掃から始められます。

 第二の勤行とは、よく経典を読むことです。 それもお布施を貰うために読むのではなく、あくまでも自己の修養のためで、ひとに聞かせるのは第二義です。

 第三は学問です。 仏の教えやその意味をひとに伝えるには、僧侶自身に学問がなければなりません。 また三界の大導師となるには、仏教の枠内だけの学問ではなく、世間知にも通じていなければなりません。 しかし、これはあくまでも知恵をみがくための学問であって、狡智にたけることではありません。

 これら三つのものを仏教では戒・定・慧の三学といって、僧侶だけでなく、在家信者にとっても円満な人格を陶冶するのに欠かせない、生活の実践徳目になっています。