仏像の光背について
尊敬するに価する円満な人格者には自ずと頭が下がり、ちょうどそのひとに後光がさしたように見えますが、仏教では仏の徳をしたって仏像に人格の象徴である光背をつけます。
仏像がインドの北西部で造られた西紀前後の初期のものには光背がないが、時代が下がるにつれてつき始め、その模様も唐花、唐草、化仏(小さな仏)、種子(梵字)、天人等が彫刻され、千差万別で、その特徴によって製作年代が推定できるほどです。
仏教の庇護者として有名なクシャン朝のカニツカ王(144-170頃)の金貨には、光輪を背にした仏像が彫られ、これらはおそらくイランにおける太陽神で、ゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』の中で勝利者とされ、頭上に光芒を放つというイランのミスラ神崇拝の影響もあったことでしょう。
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小アジアの光明思想はヨーロッパにも伝わり、キリスト教会でも、とくに東方教会(ギリシャ正教)で礼拝されるマリア・キリスト・天使・聖人などの肖像(イコン)にも光背をつけるようになりました。これは、ローマ帝国でキリスト教が公認された392年以後に造られたもので、立像はなく、平面的な肖像だけが残っています。
仏像の種類によって、光背の形も異なりますが一般に頭光(ずこう)と身光(しんこう)とに分けられます。
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