様々な仏像の手
仏教は人々の性格や能力に応じて慈悲の教えを説くので、人間に千差万別あるように、仏像の全身を駆使して仏の意志を相手に伝えようとします。そこであらゆる手つきをし、ニ本の手で足りないときには手を千本つけ足す千手観音像のようなものもあります。
仏像をよく見ると、それぞれ手や指の形、持物が違っています。これを手印、或いは印契、契印、印相などとも呼んでいます。
奈良の大仏は右手を右胸の前に出し、手のひらを立てて前方に向けていますが、これを「施無畏印」といい、説法していることを意味し、左手のひらを前方に向けて下に垂らしているのは「施願印」といい、人々の願いをかなえてあげようという意味です。
鎌倉の大仏は左右の手のひらを重ね、人差指を曲げて親指とつなぎ合わせているが、これを「定印」といい、真実の姿に想いをめぐらしていることを意味します。
両手を胸のあたりに持ってゆき、右手を前方に向け、左手を下でささえているのを「転法輪印」といい、釈尊が説法していることを意味します。
また、左手の人差指を上に向けてこぶしをつくり、右手のこぶしの中に入れた形を「智拳印」といい、金剛界の大日如来の結ぶ印で仏とわれわれが一体となることを意味しています。
このほかにもいろいろな形がありますが、これらの違いはみな仏教の教えをあらゆる手段で人々に示すシンボリズム(象徴)なのです。
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